SPECIAL INTERVIEW 西村宜隆氏が語る KONAMIの音ゲーの未来 2025年10月より本格始動、アーケードゲームを中心に企画・開発等を手掛けている新会社コナミアーケードゲームス。本特集を記念して、さまざまな形で広げている同社のゲーム内外での動き、事業を率いる立場から見た音楽ゲームなど、西村宜隆社長にこれまでと今後の取り組みについてうかがった。 --- 西村宜隆氏(文中は西村) コナミアーケードゲームス代表取締役社長。KONAMIのアーケードゲーム事業を牽引。ビデオゲーム機やメダルゲーム機、プライズ、キッズジャンル、オンライン接続サービスなどの提供に加え、eスポーツにも積極的に取り組み、業界全体の活性化を目指す。海外市場にも挑戦。 --- さまざまなユーザーの声が聞けるように。積極的な情報発信 ——十数年前にクリエイターやコンポーザーとしてゲーム制作に携わっていたころと、会社や事業全体を判断する立場になった現在とでは、考えかたや物事の見かたはどのように変わったのでしょうか。 西村 私としては一足飛びに変わったという感覚はなく、それぞれの立場で経験を積みながら少しずつ考えかたが変わってきたという認識です。以前は楽曲などの成果物をお客様に評価していただいていましたが、チームとして成果を出すこと、部門として成果を出すこと、そして会社全体としてどうあるべきか、というように、立場や役割が変わる中で考える範囲が少しずつ広がってきたのだと思います。アミューズメント施設を見ると、ほぼすべてのコーナーにKONAMIの商品・サービスがあって、そのすべてが私の責任で世の中にリリースされています。ゲームは本当に多くの方々の協力によって成り立っています。そのため、いまは作品そのものだけではなく、組織として成果を出し続ける状態を作ること、そして会社が中長期的に成長していくために何をすべきかを考えることがより重要になっています。外から見ると大きく変わったように見えるかもしれませんが、これまでの経験の積み重ねの延長線上にある感覚です。 ——読者アンケートでも、これからの会社を応援する声が多数ありました。 西村 ありがとうございます。しっかりがんばっていきます。これからも、お客様から寄せられるさまざまな声を大切に受け止めながら、よりよい商品やサービス作りに活かしていきます。 ——2025年10月からの新会社の本格始動以降、情報番組の“BEMANI生放送(仮)”の復活、YouTubeの新規チャンネル、情報発信の機会が増えています。以前と比べて、積極的に行うようになった背景にはどのような考えがあるのでしょうか。 西村 音楽ゲームが始まったころは、お客様の意見を知る機会はロケテストでの交流といったアナログなものしかありませんでした。その後、e-amusement(※1)を通じて、お客様の傾向をKONAMIが把握できるようになり、人気の楽曲や好まれる譜面の傾向など、お客様の趣味嗜好をデータとして得られるようになりました。さらに、いまはSNSが広く普及しています。お客様のアナログな意見も、デジタルデータのように取り扱える時代になってきました。 ※1 e-amusement……KONAMIのアミューズメントゲームと連動しているネットワークサービス。ゲームの成績閲覧やゲーム内機能のカスタマイズ、SNS機能、データ引き継ぎなどさまざまなものを搭載している。 ——数字だけでは見えない声も多いですよね。 西村 自分たちのコンテンツがどう評価されるか、これから取り組もうとしていることはどのような反応があるか、ほかにどのような意見や要望が寄せられるか。e-amusementから得られる数字だけではなく、そのような声も幅広く収集する必要があると考えています。そのためには、お客様との接点になる“きっかけ”が欠かせません。多方面にわたってきっかけを作り続けることを考えたときに、番組などで情報を発信し続けることが、非常に重要な取り組みだと考えています。 ——さまざまな形で紹介していくことにも、意味があるのですね。 西村 たとえば“BEMANI生放送(仮)”だけでは、すべてのお客様の声を拾えません。ふだんゲームを遊ぶ機会が少ないが「BEMANIのおもしろい話が聞きたい」という方も私たちにとっては大切なお客様です。そのため、できるだけ番組ごとに内容や切り口が重ならないよう意識しながらお届けしています。 ——社員の方からの提案を採用する際は、どのような点を大切にしていますか? 西村 私が心掛けていることは「お客様をワクワクさせられるか」という視点です。制作やイベント運営、プロモーションなど、さまざまな部署からアイデアが寄せられますが、肩書きや部署に関係なく、いい提案であれば積極的に挑戦したいと考えています。現場からつぎつぎと新しいアイデアが生まれるほうが理想だと思っています。そのため、「おもしろい」、「お客様に喜んでいただけそうだ」と感じたものについては、できる限りチャレンジできるよう背中を押すことを意識しています。 --- サントラCD、そのほかグッズ展開も意欲的 ——2026年夏ごろには、『beatmania IIDX』、『jubeat』の新作サウンドトラックCDの発表も話題になりました。久々のサントラCD展開の背景や狙いについてお聞かせください。 西村 情報をたくさん展開すると、お客様の要望が耳に入ってきます。なかでも、本当にいちばん声が多かったのがサウンドトラックCDでした。昔から集めてくださっているユーザーの、「続きがない」という反響がすごく大きかったです。そこは私たちとしてもしっかり取り組んでいこうということで、関係各位の皆さまのご協力のもと、実現にいたりました。 ——当時ネットの反応を見ていると、それぞれ大きく盛り上がっていましたね。待っていた人たちが本当に多かったんだなと感じました。 西村 とても盛り上がりましたね。よかったです。これからもいろいろな作品のサウンドトラックCDやファングッズなど、そういった展開に積極的に取り組んでいきたいと考えています。 ——ゲーム以外の企画ですと、『pop'n music』に加えて、ポップアップショップや展覧会、2027年開催の単独ライブなど、さまざまな展開が続いています。ほかのタイトルでも、同様の展開を期待できるのでしょうか。 西村 すべてのタイトルで同じことができるかというと、同じではなくコンテンツに適した展開を検討していくことが必要だと思います。基本的には、事業戦略に基づいて“BEMANI”(※2)のリブート施策を進めていて、『pop'n music』が大きな反響をいただいております。我々は独自の目標を設定し、その達成に向けて日々取り組んでいます。その中で、市場全体も大きく盛り上がってきていると認識しています。この成功事例をベースに、ほかのタイトルでも、それぞれ考えながら推進していきたいですね。 ※2 BEMANI……コナミアーケードゲームスの音楽ゲームの統一ブランド名。 ——『pop'n music』の好調な反応は、何か予想を超えるものもあったのでしょうか。 西村 予想していた部分と、していなかった部分があります。予想していなかったのは、ホロライブの不知火フレアさんをきっかけとした盛り上がりですね。それ以外のところは、我々自身が能動的に取り組んでいました。後から『pop'n music』など“BEMANI”タイトルとのコラボレーションも実施しましたが、当初はそうした計画はなかったです。不知火フレアさんはもともと『pop'n music』がお好きで、新しいスタートを自発的に応援してくださいました。それが新たなユーザーを掘り起こすきっかけにつながったことは私たちも予想以上の展開でした。おかげさまで、それをきっかけに当社のコンテンツへ興味を持ち、新たに遊んでくださる方が増えました。 ——いろいろなきっかけを作っていくことが大切なのですね。 西村 そうですね。そうしたきっかけから盛り上がりを作り、継続的な成長につなげていくことが大切だと考えています。これまでさまざまな施策を持続的に展開してきたからこそ多面的な広がりも生まれました。総合的に見て、全体をしっかり盛り上げられてよかった、という話ですね。 --- リブート戦略の『jubeat』新筐体 ——音楽ゲームのリブート戦略の一環とのことで、『jubeat』シリーズは18年ぶりの新筐体が発表されましたね。 西村 『jubeat』は、世界中で多くのユーザーに支持されてきたタイトルで、“BEMANI”のアーケードゲームを代表するタイトルのひとつです。 ——コナミアーケードゲームスが進めている“音楽ゲームのリブート”とは、具体的に何を意味するのでしょうか。 西村 リブートをどう捉えるかは、人によって考えかたが異なると思います。私自身の捉えかたで言えば、音楽ゲームは長い歴史があり、遊べば遊ぶほど上手になる、技術蓄積型のゲームです。そうした伝統的な魅力は残しながら、ユーザーの新たなモチベーションにつながるきっかけを改めて見つめ直し、これまで長く遊んでくださったお客様にも、新しい世代のお客様にも響く形で再構築することが私たちの考えるリブート戦略です。アミューズメント施設にいるときだけでなく、施設を離れているときも含めて、いつでもワクワクできる環境をしっかり作り続けることが重要と考えます。新筐体の『jubeat』も、単に過去の『jubeat』を再現するのではなく、いまだからこそ実現できる体験や遊びかたを取り入れながら、新しい価値を提案していきたいと考えています。 ——読者アンケートでは、いろいろなタイトルの新作や新バージョンを遊びたいという意見がありました。コナミアーケードゲームスにも、そうした声は多く届いているのでしょうか。 西村 望む声は多いですね。まずは『pop'n music』をモデルケースに、『jubeat』をしっかり成功させることが重要だと考えています。 ——『jubeat』新筐体では、ゲームセンターでのロケテストに加え、プレーヤーを社内に招待する試遊会も行われました。その形式で実施された理由はなんでしょうか。 西村 『jubeat』は改良しているところが多岐にわたります。今回は新しいハードウェアで、液晶モニターやサウンド面なども変わっています。ロケテストだけではわからない魅力もあります。そこで、トッププレーヤーや発信力のある方々に、一度じっくり遊んでいただく機会を設けて、最終的な量産に進めるのがベストと判断しました。せっかくその機会を設けるのであれば、発信もしていただいて、ほかのユーザーの期待を高めるのもいいのではないか。そう考えて、あのような形にしています。 ——一般のプレーヤーが試遊目的でゲーム会社へ行ける機会はなかなかないので、こういった企画は珍しく感じましたね。 西村 こういう機会を通じてしっかり確認を積み重ね、よりよい商品作りに活かしていきたいと考えております。ぜひ、ご期待いただければと思います。 “チェンジを見据えたチャレンジ”——つぎの10年を担う作り手に求めること ——長く音楽ゲームを支えてきたスタッフがいる一方、新しいスタッフも入ってきます。これからの音楽ゲームを担う人たちに、どのようなことを期待していますか。 西村 じつは、昔もいまも求めているものは変わっていません。KONAMIには、“カスタマー・イン”、“チャレンジ”、“チェンジ”、“コンプライアンス”という“4C”の考えかたがあります。まずいちばんに学ばなければいけないのは、お客様を第一に考えて行動する“カスタマー・イン”だと思っています。それを学ぶと、お客様が何を大切にされているかが見えてきます。ゲームで変えていいものと、変えてはいけないものを選び分けるうえで、“カスタマー・イン”の心はとても重要です。そのうえで、“チャレンジ”しなければいけません。ただ、“チャレンジ”という言葉の捉えかたは人それぞれです。たとえば、私が思う“チャレンジ”とほかの人が思うものは、おそらくレベル感やジャンルが違うと思います。「私、がんばっています」、「チャレンジします」と言っていても、それで実際に世の中が変わったのかどうか。そこが重要になってくると思います。 ——“お客様をワクワクさせられるか”という話とつながってきますね。 西村 “BEMANI”の長い歴史は、つねに新しい世代による“チャレンジ”によって作られてきました。私たちの世代もそうでしたし、現在、第一線で活躍しているクリエイターたちも、つねに新しい“チャレンジ”をしてきています。だから私は、これからのスタッフに、「これまでのやりかたを守ってほしい」とはあまり思っていません。もちろん、“BEMANI”らしさやゲームとしてのおもしろさも受け継いでほしいですが、そのうえで新しい発想を積極的に持ち込んでほしいと思っています。 ——その新しい発想は、どんなところから生まれてくると考えていますか? 西村 若い世代が触れている音楽やエンタテインメント、SNS文化、コミュニケーションの形は、私たちの世代とは大きく異なります。だからこそ、そこから生まれる新しい感性やアイデアには大きな可能性があると信じています。これから10年、20年の歴史を作っていくのは若いスタッフやつぎの世代です。私自身は、みずからが先頭に立ち彼らが安心して挑戦できる環境を作ることが役割だと考えています。“チェンジ”を見据えて“チャレンジ”し、その土台となる“カスタマー・イン”、“コンプライアンス”をしっかり学び、その後につなげてほしい。それが“BEMANI”のクリエイターに求めていることです。 ——最後に、KONAMIの音楽ゲームを応援しているファンの皆さんへ、メッセージをお願いします。 西村 まずは、KONAMIの音楽ゲームを長く遊び続けてくださっていることに、感謝をお伝えしたいです。振り返れば、音楽ゲームは多くのプレーヤーの皆さまに支えられながら発展してきました。ゲームセンターで遊び続けてくださっている方、SNSや配信で盛り上げてくださる方、イベントやライブに足を運んでくださる方。本当にたくさんの方々の存在があって、“今”があります。これまで築いてきた歴史や文化を大切にしながらも、つぎの時代に向けて新しい価値を生み出していきたいと考えています。これからもクリエイターや制作スタッフ、プロモーションチームが一丸となり、驚きや感動、新しい音楽との出会いを届けるとともに、よりおもしろいゲームや体験を提供できるよう取り組んでいきます。ぜひこれからのKONAMIの音楽ゲームにも期待してください。そして、その未来を私たちとともに楽しんでいただけたらうれしいです。 --- 「これまで築いてきた歴史や文化を大切にしながらも、つぎの時代に向けて新しい価値を生み出していきたいと考えています」